万博合わせ導入に「待った」 大阪の外国人観光客への徴収金制度とは
2024年4月29日
将来的なオーバーツーリズム(観光公害)対策として、大阪府が全国に先駆けて検討を始めた外国人観光客への
徴収金制度の行方に注目が集まっている。吉村洋文知事は当初、2025年大阪・関西万博が開幕する来年4月の運用開始を
目指すとしたが、課題も多く、見通しは立っていない。
全国で前例なく、業界の反発懸念
制度検討のきっかけは3月府議会中だった。吉村知事は外国人観光客の快適な滞在と地域住民との共存を挙げ、
景観美化などに充てる財源確保の必要性を訴えた。徴収方法として、ホテルなどを利用する際に支払う宿泊税と同じく、
府内の施設などを利用した際を想定していると説明した。
宿泊税については既に府が17年に導入した。現行は1人1泊7000円以上のホテルなどに宿泊した場合、
国籍や居住地に関わらず料金に応じて100~300円を課税している。
各自治体の条例で徴収できる「法定外税」の位置づけで、国の同意も必要となる。だが、今回のように
外国人を主とした課税は全国で例がなく、租税条約が禁じる差別的扱いに当たる可能性がある。
さらに徴収方法も一筋縄にはいかない。在日外国人らに「訪日客ではない」と証明するための身分証を提示してもらう
必要があり、施設側は予約システム改修の事務手続きも生じる。煩雑となって利用を敬遠することも予想され、
業界団体から反発を招きかねない。早急に検討が進むとみられた議論に突如「待った」の声も掛かった。
万博開幕1年前にあたり来日した博覧会国際事務局(BIE)のディミトリ・ケルケンツェス事務局長が吉村知事らとの
意見交換会で、「(徴収金制度は)万博後の導入を考えてほしい」と要望し、再考を迫ったためだ。
万博には海外から約350万人の来場が見込まれており、徴収金は「歓迎されていない」とのメッセージになりかねない。
とはいえ、府内への訪日外国人観光客は2月に約110万人と新型コロナウイルス感染拡大前の水準を超え、
制度構築を急ぐ府の思惑とBIEの懸念が交錯する。
ケルケンツェス氏の発言について、吉村知事は「無理くり万博に合わせてやるつもりはない。長い目でみて政策を
どうするか」との立場だ。24日に導入を検討する有識者会議の初会合があり、インドネシア・バリ島で観光資源保護を
目的に導入した観光税など、海外の事例を参考にすることを確認した。委員からは「外国人差別もはらんでいる」
「正当化する根拠があるかどうか」などの意見も出ており、今後、慎重に議論を進める方針だ。
維新は何をしたいのか分かりません。もうそろそろ決断を!!