浜松で「ドーム球場反対」の署名運動スタート
2023年2月23日
静岡県の川勝平太知事は、遠州灘海岸の南海トラフ地震・津波浸水想定地域の「大型ドーム球場建設」にゴーサインを
出した。「人命軽視」と怒る浜松市民や、絶滅危惧種・アカウミガメを守るNPO団体は「絶対反対」の署名運動を
スタートした。
浜松市の遠州灘海岸に計画される県の大型野球場については、2022年11月27日現代ビジネス(「浜松のドン」
スズキ相談役、鈴木修が裏で糸引く、大型野球場計画の「大矛盾」)記事で紹介している。
浜松市民らが「人命軽視」と怒っているのはなぜか。遠州灘海岸には高さ13~15メートルの防潮堤がある。それをもって
川勝知事は「南海トラフ地震の津波対策は万全」として、防潮堤に隣接する津波浸水想定地域に大型野球場建設を
決めたからだ。同じ遠州灘海岸に位置する中部電力・浜岡原発には、19メートルの津波を想定して高さ22メートルの
防潮堤を建設、さらに22・7メートルに嵩上げする計画している。まさか、浜岡原発の地域だけ津波想定が極端に
高いわけではない。
大勢の人が集まる大規模施設計画で、県の津波対策はあまりに不十分である。県民の安心、安全を守る行政の役割を
放棄したと言える、まさに「人命軽視」である。
一方、日本有数の産卵地として知られる遠州灘海岸の国際保護動物かつ絶滅危惧種のアカウミガメ保護問題を、
川勝知事は無視しようとしている。
調査費に3000万円の「怪」
ところが、川勝知事は2023年2月16日の会見で、「アカウミガメの件では、調査が不十分だということでそれ(調査)を
やり直した」と発言した。この発言はどう考えても“嘘”である。アカウミガメの産卵シーズンは、毎年5月~8月であり、
孵化した子ガメが海に戻るのは8月~10月である。
担当課がどのように説明したのかわからないが、まだ夏場の産卵シーズンさえ始まっていない。昨年夏の調査以後、
アカウミガメの上陸など全国どこにもないから、川勝知事が言う照明施設によるアカウミガメへの影響調査の
やり直しなどできるはずもない。
川勝知事は、何としても大型ドーム球場計画を進めたいのである。だから、いつも通りの“嘘”でごまかしたのだろう。
16日の会見で、中日新聞記者が「ドーム構造で、観客席2・2万人規模の球場だと総事業費370億円(公園全体で520億円)、年間維持費4・8億円(30年に1回想定される大規模修繕積立金を合わせると7億円)にも上る。需要調査を行っていない
段階で、メーン球場の構造や規模を決定するのは早計ではないか」と追及した。
川勝知事は「照明を遮断するドーム型にした場合、どういう需要が見込めるのか、官民連携の可能性も調査する必要が
ある」などと述べた。知事の発言を裏付けるように、現在、県議会で審議されている来年度予算案には
「遠州灘海浜公園官民連携導入可能性調査費」として3000万円が盛り込まれている。
同予算は、大型ドーム球場を前提に、民間活力を生かしたPFI(民間の資金と経営能力、運営などを活用する公共事業の
手法)事業を実施する可能性を調査してもらう費用である。
担当課の説明資料によると、PFIと従来型の公共事業の比較で、VFM(費用を投じた価値)を評価するらしい。
市場原理の導入によるコスト削減を図ってVFMを生み出したいとのことだ。PFIやVFMといった何だかわからない英略語を
使うことで、3000万円もの予算をもっともらしく見せようとしていることははっきりとわかる。
まずは大型ドーム球場計画に伴う「危機管理専門部会」「アカウミガメ専門部会」を設置して、それぞれの影響について議論すべきである。それも事業担当課ではなく、危機政策課、自然保護課に任せなければならない。
リニア問題で、川勝知事は2018年11月に、「命の水を守る」を議論する地質構造・水資源専門部会、南アルプスの
自然環境保全の生物多様性専門部会を設置した。「反リニア」の川勝知事の意向に従い、5年近くたっても、
2つの専門部会は不毛な議論に明け暮れている。
大型ドーム球場建設に伴う「危機管理」と「アカウミガメ」への影響が大きなテーマになるのは、自明の理である。
しかし、川勝知事肝煎りの建設計画だから、県にとって不都合となる専門部会などつくるはずもない。
リニア問題では、大井川流域住民の「命の水を守る」、南アルプスの「自然環境保全」という2つの主張で、川勝知事は
JR東海に「ノー」の姿勢を貫く。
2つの主張を見れば、大型ドーム球場建設を進めることは明らかに“ダブルスタンダード”だが、川勝知事に
“社会常識”や“正義”をいくら唱えても、ムダであることは誰もがわかっている。
だから、世論を巻き起こす「署名運動」が唯一の方法なのだろう。
なりふり構わず、大型ドーム球場建設を進めたい3000万円予算をつけることしか考えない静岡県という行政組織は確実に
腐っていく。
上記のような記事を見つけましたがしっかりと情報を出して住民に問うてみたらどうでしょうか?
自然は破壊するのは簡単ではございますが、戻すのはかなりの時間と労力が要ります。