女教師とホスト(Snow Manラウール)のドラマ『愛の、がっこう。』がいかに「とんでもないドラマ」だったかということ(風営法でお困りはもみじ110番)
2025年9月25日
教師のドラマであった『愛の、がっこう。』
『愛の、がっこう。』はタイトルどおり、教師の物語であった。
主人公の木村文乃演じる小川愛美は、高校の国語の教師である。
真面目なタイプの女性であり、生徒にほぼ無視されている。
無視されているのにがんばっている姿がずいぶん痛々しかった。
生徒に無視されるタイプの教師は、恋愛もののヒロインとして、強く共感を呼ぶわけではない。
そういう設定で始まった。
真面目な教師と女たらしのホストという「あまりにベタ」な始まり
担任している生徒が、親の金でホストクラブに通っていたため、その相手のホスト・カヲル(ラウル)に会う。
そこから物語が始まる。
カヲルはいかにもホストらしい性格で、調子良くて、口がうまくて、女ったらしという雰囲気がしている。
真面目一辺倒の女教師と、女を口先で言いくるめて金を巻き上げる男という、わかりやすいベタな構造で始まった。
目新しいものではない。これだけではなかなか惹かれない。
メインの2人に魅力がないドラマの不思議
構造がベタで、それぞれのキャラも、まあベタであった。
最初から、このドラマは、中心2人で惹きつけるつもりがなかったようだ。
そこに気づくと、かなり巧妙に仕組まれたドラマだとわかる。
見つづけたのは脇役が気になったから
ドラマは見つづけたのは、脇の役者から目が離せなかったからだ。
周りの人たちが個性的に描かれて、ちゃんと変だった。
ひとりは中島歩の演じる銀行員・川原洋二。
朝ドラ『あんぱん』でも圧倒的な存在感を残した中島歩は、ここでも印象的だった。
妙で変な役を中島歩が演じる
彼が演じたのは、「結婚するのに良い相手だ」とヒロインの父が選んだ男である。
父親に選ばれるだけあって、表向きはとても真面目そうな銀行員であり、ヒロインにも女性と縁が無いと主張する。
しかし、裏ではワケありな女性と交際していて、わかりやすい裏表があった。
結婚も出世と考えているようで、打算と欲望をもてあましている男性だった。
好感は持てない。
でも気になってしかたがなかった。
「奇妙な父」がドラマをすすめていく
もう一人の「気になる変な脇役」は父だ。ヒロインの父。演じたのは酒向芳。
大手企業の役員で、自分の言うことだけ聞いていれば娘は幸せになれると信じている権威的な親である。
最初のうちは会社で偉い人だということで、ぎりぎりバランスが保たれていたが、ドラマが進むにつれて、
バランスが崩れて、変な人になっていく。
彼も目が離せない。
2人がドラマ進行を推し進めていたとおもう。
カヲルは美容師を目指す
『愛の、がっこう。』は最後、まるくおさまる。
ホストだったカヲルは、主人公との愛のために、ホストから足を洗い、美容師を目指す。
主人公は、元ホストと付き合っていることを、正直に学校に報告して退職させられる。
「私たちは文句言う相手が欲しかったの」
彼女はクラス担任だったので、なぜ急に辞めたのだ、と生徒が騒ぎだす。
学校側が無視しようとするも、副担任の佐倉先生(味方良介)が労を執って、生徒たちと面談させてくれる。
(味方良介の演じた同僚教師も、すごくいいサブキャラでした)
生徒たちは体育館に集まって、主人公に面と向かって文句を言う。
「私たちは文句言う相手が欲しかったの」
文句を言う生徒たちにぼろぼろに泣けた
だったらいま言ってくださいと促すと、口々にみんな罵倒しはじめる。
「授業が破壊的につまんなかった」「当たり前のことしか言わなかった」
「もっと先生を無視したかった」「泣かせたかった」「勝手にやめんなよ」
生徒たちは悪口しか言わない。
そして見ていて、ただただ、ぼろぼろに泣けた。
このドラマでは、授業シーンや生徒とのシーンは、さほど重きを置かれていなかったはずなのに、
でもこの最後の学園シーンではぼろぼろに泣いた。
このへんがこのドラマのすごいところだ。
変な人の最後の描写が飛び抜けて爽やか
婚約者になりそこねた川原洋二(中島歩)の最後も、じつに爽やかだった。
ヒロインに最後に電話かけたあと、自分を奮い立たせるために、「がんばれ、がんばれ、川原、がんばれ、がんばれ、洋二!」と
小さく呟いていたら、そばにいたノリのいい外国人たちが勝手に唱和して、
がんばれ、がんばれ、と言ってもらって、それに乗っかって彼女の連絡先を消した。人生を進めた。
快哉を叫びたくなる爽やかなシーンに仕上がっていた。
ちょっとしびれてしまった。
ふたりのいいシーンで終わらない
ドラマの最後には、いろいろあった主人公(木村文乃)と相手(ラウル)が、海岸で再会する。
ふたりが海辺で抱擁して“昼花火”が揚がり、これから楽しいことが起こりそうな気配に満ちたところで「愛の、がっこう。」という
手書きの文字が、一文字ずつ書かれる。
すごく良いラストシーンである。
でもここで終わらなかった。
最後の最後に出てきたのはヒロインの父(酒向芳)であった。
妻が(つまりヒロインの母が)働きに出て、彼は冷蔵庫のなかのもので料理の用意をし始める。
そこでドラマが終わった。
きわめて権威的で強圧的で偏屈な父親が、どうやら心を入れ替えたらしい、というシーンで終わるのである。
愛とは教師とホストだけのものではなく
「愛」とは単なる恋愛だけを指していたのではないらしい。
もちろん「ヒロイン愛美とホストのカヲルの恋愛物語」を見届けたかった人には満足な結末は用意してあった。
でも同時に「居心地悪そうに生きている人たちの爽やかな結末」も用意してあった。
とても素敵で、とても見事である。
最後の最後にそれに気づかせるあたり「とんでもないドラマを見せられた」と唸ってしまった。
単なる恋愛ドラマでもなく、学園ドラマでもなく、色々楽しませて頂ける作品でした。
風営法は従前と比べて改正等ありますので、少しでもこの関係の業種の方で気になる方は「もみじ110番」へ